配線規格情報

ネットワークの配線設計(LAN配線)に考慮すべき主な規格

ネットワークの構築時にサーバールームの設計や配線構成設計を行いますが、その際に知っておくべき基本的な規格を以下に示します。これらの規格とガイドラインを守ることでネットワークの高速化や将来のネットワーク機器の交換時にも配線システムは継続利用が出来ます。さらに不要な配線に起因する日常運用のトラブルを避けることで長期的コストを抑えることが可能となります。


TIA-569-E Cover

TIA-569-E Telecommunications Pathways and Spaces

建物内および同一敷地内での建物間で通信ケーブルが布設される環境を定めています。
具体的にはケーブル敷設ルートに必要なサイズ、MDF室、IDF室、サーバールームの広さや照度そして空調環境等です。新築ビルの建築設計や企業の通信室等の設計には欠かせない内容となります。
国際標準規格ではISO/IEC 14763-2が対応しますが、TIA-569-Eの方がより具体的な内容となっています。

日本における建物設計も本規格を参照すべきですが、新築ビルであっても数十年前の通信環境を前提に設計されている例が多く見受けられます。


TIA-568.0-E Cover

TIA-568.0-E Gereric Telecommunications Cabling for Customer Premises

通信会社ではない一般企業や学校等における配線システムの基本的設計手法が記述されています。
ネットワークのコアとなるメインのサーバールームから各フロアに設置されるサブ通信室等への接続構成や水平配線で許容されるオプション構成等が示されています。
さらに各種ケーブルと各種通信方式における最大のケーブル布設長や布設時の注意点も示されています。


TIA-568.1-E Cover

TIA-568.1-E Commercial Building Telecommunications Infrastructure Standard

一般企業向けの配線システム設計に特化した内容の記述になっています。
TIA-568.0-Eとの違いは一般オフィスを前提にしたフロアサイズとサーバールームの設計について記述されている点です。


TIA-568.2-D Cover

TIA-568.2-D Balanced Twisted-Pair Telecommunications Cabling and Components Standards

メタル配線と呼ばれるCategory8規格までのシステムに使用されるケーブル、コネクタ、パッチコード等の材料規格です。市場に流通している配線材料には本規格を満足しない製品がありますので、材料の選定には注意が必要です。このTIA-568.2-Dの追加規格としてTIA-568.2-D-1 にCategory8試験用バラン規格が制定されています。


TIA-568_3-D Cover

TIA-568.3-D Optical Fiber Cabling and Components Standard

光ファイバーケーブルシステムの材料規格です。
本規格から従来型マルチモードファイバーケーブルであるOM1, OM2は今後の配線設計候補から削除され、OM3, OM4およびTIA 492AAAEの品質について記述されています。

同様に、従来型シングルモードファイバーケーブルであるOH基による1383nm付近で損失が発生していたOS1が設計候補から削除され、CWDMの波長多重が可能なファイバーケーブルの品質について記述されています。屋内用シングルモード光ファイバーケーブルは損失が1.0dB/km以下、屋内と屋外に共用されるシングルモード光ファイバーケーブルは0.5dB/km以下、屋外専用のシングルモード光ファイバーケーブルの呼称をOS2と定義しその損失は0.4dB/km以下としています。


568.3-D-1

TIA-568.3-D-1 Optical Fiber Cabling and Components Standard-Addendum 1:General Updates

TIA-568.3-Dの追加規格として内容の更新が行われました。

主な追加内容としてはマルチモード光ファイバーケーブルのTIA 492AAAEを正式にOM5と呼び、OH基の損失の無い屋内用シングルモード光ファイバーケーブルと屋内と屋外に共用されるシングルモード光ファイバーケーブルをOS1aと呼んでいます。

カラーコードについても再定義され、光アダプター、コネクター、ブーツ等の色をOM3,OM4はアクア、OM5はライム、OS1a,OS2はブルーそしてAPCコネクタはグリーンと明記されました。

また、マルチモード光ファイバー試験に使用されるテストコードと一般コネクタの接続損失について従来の0.3dBから0.5dBに修正されました。これでシングルモードファイバーと同じ損失となりました。一般コネクタ同士の接続損失は1箇所0.75dBでマルチモード、シングルモード共に同じで変更はありません。

現在TIA-568.3-Dとその追加規格である568.3-D-1を統合するTIA-568.3-Eの制定が進められていますが、その中で更に呼称変更が予定されており、屋内と屋外に共用されるシングルモード光ファイバーケーブルの呼称がOS1aから変更されます。


TIA-526-14-C Cover

TIA-526-14-C Optical Power Loss Measurement...Multimode Attenuation Measurement

マルチモード光ファイバーの損失測定要領を示す規格文書ですが、現在改訂版のTIA-526-14-Dの検討が進められています。TIA-526-14-Cの本文はIEC 61280-4-1 edition 2が参照される形式ですが、TIA-526-14-Dではedition 3が参照されます。

TIA-526-14-DおよびIEC 61280-4-1 edition 3では損失測定に用いる測定器の試験コードに曲げ耐性を持つBIMMファイバーの使用が認められるようになります。主な理由としてBIMMファイバーが普及している現状を踏まえての改定のようですが、関連して試験コードの長さも2m~10mとされ、BIMMコードを使用する場合は長めの試験ケーブルが推奨されます。

BIMMファイバーは光源からの大きな入射角や小さな曲がりの部分で光がコア周辺にガイドされクラッド側に逃げない性質を持つためですが、そうなってはEF光源にする意味が無くなってしまいます。しかしこのコアとクラッドの境界付近を通過する光も直線状態や大きな曲げ半径の場所では1~2mで解消されるため長めの試験コードが推奨されるのです。従ってBIMMだから試験コードを小さな曲げ半径にして損失測定を実施しても良い事にはならないので注意が必要です。


TIA-526-7-A Cover

TIA-526-7-A Measurement of Optical Power Loss....Single-Mode Attenuation and Optical Return Loss Measurement

シングルモード光ファイバーの損失測定とリターンロス測定要領を示す規格文書です。本規格も本文はIEC-61280-4-2を参照する形式をとっています。

損失測定手順の1~3コード(ジャンパー)基準方式についてはマルチモードの基本的な考え方と同じです。両側に光パッチパネルで構成される場合は1コード基準が推奨され、試験機のコネクタ形状と光パッチパネルのコネクタ形状が異なる場合は2コード基準、測定区間が光パッチパネル間ではなくチャネルや光パッチコードの損失測定には3コード基準方式で測定を実施します。


TIA-1152-A Cover

TIA-1152-A Requirements for Field Test Instruments and Measurements for Balanced Twisted Pair Cabling

Category5e~Category8に対応するフィールド試験機規格です。

試験機の精度と対応配線規格が示されています。Level lle:Category 5e, Level lll:Category 6, Level llle:Category 6A, Level 2G:Category 8という対応になります。(参考:IEC規格のClass FはLevel lVで600MHzまでの精度です。)

日本では文部科学省のGIGAスクール構想で学校内の配線はCategory 6Aが求められ、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事)ではCategory 6A (Class EA)配線にはエイリアンクロストーク測定が要件となっています。このエイリアンクロストーク測定時の試験機接続構成も本規格に記述されています。

対応するISO IEC61935-1規格には同様の試験構成とエイリアンクロストークポートの選定について記述されています。


TIA-942-B Cover

TIA-942-B Telecommunications Infrastructure Standard for Data Centers

データセンタに特化した配線システム規格です。現在追加規格であるTIA-942-B-1 "Edge Data Centers" の検討が進んでいます。無人で運用される場合があるエッジデータセンタに必要な機能が盛り込まれます。


TIA-4966 Telecommunications Infrastructure Standard for Educational Facilities

学校等教育機関向けの配線システムの設計に特化した規格です。追加規格としてTIA-4966-1が2017年11月に発行され、新規のケーブル敷設にはCategory 6Aの採用が推奨されています。30m以内のCategory 8も選択肢として追加されました。


TSB-162-B Cover

TSB-162-B Telecommunications Cabling Guidelines for Wireless Access Points

無線LAN用の配線に特化したガイドラインを示しています。

スイッチから無線LANアクセスポイントまでの配線の内、アメリカBICSIからの要請でアクセスポイント側に従来規格が定める通信アウトレットを介さない配線構成が現在では認められています。

これに対して本規格では従来どおり、アクセスポイント側に通信アウトレットを使用して柔軟な長さのパッチコードを用いることによりアクセスポイント位置の変更や増設にも対応可能とする考え方です。アクセスポイント側ケーブルのプラグ付近は急激な曲げを強いられたり位置変更により移動されることからダメージを受ける可能性が高く、交換可能なパッチコードを使用する方が合理的と言えます。


TSB-184-A Cover

TSB-184-A Guidelines for Supporting Power Delivery Over Balanced Twisted-Pair Cabling

LAN用Category 5e~Category 8の4Pツイストペア配線で機器に電源を供給する場合のケーブル施工ガイドラインを示しています。

Ethernet Allianceが定めるPoEクラス8では90W以上の電力をネットワーク機器に供給します。これは1ペアあたり約1Aの電流が流れることになり、今まで以上にケーブルの施工場所と束ねる本数に注意を払う必要があります。ケーブルを多く束ねると温度上昇が問題となり布設場所が鉄管内だと更に温度が上昇することになります。

追加規格としてTSB-184-A-1が2019年2月に発行され、細径AWG28ケーブルの場合の温度上昇について記述されています。結論としては細径AWG28ケーブルの用途は非常に限定されることになります。